自分の身体のように自在にピアノを弾きこなす人を見て、私もピアノを始めてみよう!と思ったはいいものの、なかなか思った通りに身体が動かせずじれったい思いをしている方も多いのではないでしょうか。今回はそんなピアノ初心者の方に、少しでも速くピアノが上達する方法を伝授します!

基礎練習を楽しむ

なによりもピアノに慣れていくことが大事です。ピアノを弾くときにはどのような身体の使い方をすれば良いのか、どのように鍵盤を押したらどんな音が鳴るのか、それを知ることで、ピアノとの距離を縮めることができます。

そんなときに役に立つのが基礎練習です。基礎練習として役に立つ教材で有名なのは、ハノンツェルニーですね。

ハノンの場合は、単純にピアノを弾くときの指の使い方の基本を教えてくれる教材で、機械的な練習が並んでいます。クラシック音楽用の教材ではありますが、どんなジャンルの音楽を弾くのにも役に立ちます。

ハノンの「60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト」より第1番

ツェルニーは、もう少し音楽的で、指を動かす以外にも、旋律の歌い方や伴奏の弾き方など、多くを学ぶことができます。クラシック音楽のなかでも、特に古典派・ロマン派の弾き方に近い奏法です。

ツェルニーの「100番練習曲」より第1番

これらの教材を使っても良いですし、単純にスケール(音階)アルペジオ(分散和音)の練習をしてもよいでしょう。(スケールもアルペジオも、「ハノン」に収録されています)

機械的に練習するときに、全ての音を均質にしたいのですが、なかなか難しいものです。この時に次のようなことを意識して指を動かすのがポイントです。

・全身をできるかぎりリラックスさせ、とくに肩が上がらないように気を付ける

・指の力や腕の力で鍵盤を押し込むのではなく、指の重さや腕の重さを鍵盤に伝えるイメージを持つ(力を抜いたほうが大きな音がでるようになります)

・指の動きに注意するだけでなく、鳴っている音に意識を向けるようにする

どれも慣れないうちは意識しようと思っても難しいものですが、日々の練習のなかで徐々に身についてくるはずです。意識を続けていれば、1週間ほどで成果が現れることでしょう。

機械的な練習はゲームのようで楽しいという方も多いのですが、一方で音楽を楽しむことができていないように思う方が多いのも確かです。

フォニムのピアノ講座では、基礎練習から美しい音を楽しむことができます。

フォニムの基礎練習

分解して練習する

さて、基礎練習で地力を身に付けるのも大切なことですが、曲の練習もとても大切です。

しかしいきなり曲全体を通して弾こうと思ってもまず弾けるものではありませんし、時間をかけて何度も繰り返したとしても、なかなか弾けるようにはなりません。

そこで、曲を分解して練習する必要があります。分解にはいくつもの方法があります。

・フレーズや小節などで区切って練習する

・片手だけ、伴奏だけ、ベースラインだけ、コード(和音)だけなどを取り出して練習する

・手の動きや身体の動きを分解して練習する

弾けない部分があったら、どのように分解して練習するかが大事になります。あまり細かく分けすぎても何をやっているか分からなくなり、分け方が大きすぎると分解する意味が無くなってしまいます。

上級者になると、弾けない部分を弾けるようにしていく感覚がつかめているので自力でも効率よく分解して練習することができますが、初心者のうちはなかなか分解の仕方がわかりません。ピアノの独学が難しいのは主にここに原因があります。

たとえば、「メヌエット」の3小節目のモルデント(下の音に引っ掛けるように素早く演奏する)が弾けなかったとします。

バッハの「アンナ・マグダレーナのための練習帳」より「メヌエット」(ペツォールト作曲)

このときは、次のように分解して練習するのがおすすめです。

弾けない部分があるときに「どの音を弾けばよいか」だけを考えてしまう人が多いです。たしかに複雑な和音や、臨時記号(♯や♭)が入り乱れている曲を弾くときはどの音を弾けばよいかに時間をかける必要があります。しかしもっと大切なのは「どのような動きをすればよいか」です。弾けない部分を練習するときは、その前はどのような手の動きをしているか、その後どのように繋がっていくか、も考えて練習すると効率的です。

また、繰り返し練習してもなかなか弾けるようにならないときは、もっと根本的に手の動きの分解から練習することができます。

たとえば、A列車で行こうの10小節目の右手が弾けなかったとします。

デューク・エリントンの「A列車で行こう」

これをどのように練習すれば良いでしょうか。もちろん、右手だけ取り出して練習することになるのですが、さらに次のように分解して練習することができます。

これは手の動きを分解して段階を踏みながら弾けるようにしていく練習法です。

曲の背景を理解する

実際に指を動かせるようになったとしても、そこから曲に仕上げていくためには、曲そのものについて知ることが大切です。フォニムの講座ではまず初めに、作曲者・時代・一般的な演奏スタイル・曲にまつわるストーリーなど、曲の解説から始まります。バッハの弾き方でアンジェラ・アキの曲を演奏したらかなりちぐはぐなことになるでしょう。

そのちぐはぐ感を楽しむアーティストもいますが、それは両方のスタイルを良く理解しているからこそできる高度な芸当です。まずは王道の演奏方法を知る必要があります。

とはいえ、論文を書いたり、自分の演奏を批評されたりするわけではないので、そこまで厳密に調べる必要はありません。ただ、次のことを調べておくだけでも、かなり見通しがよくなるでしょう。

・作曲年代

・作曲家の国籍

・名盤、名演奏

また、これらを知ることによって、知らない名曲に出会うきっかけにもなりますし、曲だけでなく様々なプレイヤーを知ることができるようになります。音楽をより長く楽しむためにも、曲の背景を少しだけでもよいので調べるようにしましょう。

また、名演奏に出会ったら、その演奏法を真似するのもとても良い練習です。なかなか真似するのも大変ですが、自分の演奏に取り入れることができそうな要素があったら、積極的に取り入れていきましょう。

上達の楽しさを知る

弾けない曲が弾けるようになっていく感覚はとても楽しいものです。初級~中級のうちは、練習して曲が弾けるようになると「なぜ自分がこの動きができているのかわからない」という不思議な感覚を持つことがあります。また「身体が勝手に曲を演奏してしまう」と思うこともあるでしょう。

はじめのうちはなかなか思うように動かなかったあなたの手も、気付いたらあなたの思いを超えて動き始めるのが楽器の楽しいところです。

さらに上達すると、レパートリー(すぐに弾ける曲)がだんだんと増えてきて、今の自分の感情を曲に乗せて演奏することができたり、「なにか弾いてよ」とお願いされたときにすぐに弾くことができたり、と楽しさはどんどん増えていきます。

上達すればするほどさらに楽しくなって終わりが無いのが楽器の演奏です。