ピアノ初心者を脱したかな?というところで現れるのが「半音階」です。

半音階はクラシックからジャズ・ポップスまで、どこにでも現れる基本的な技術で、どんな和音・コードとの相性も良いので、とても便利でかつカッコいいものです。

今回はステップアップ方式で、半音階を眺めていきましょう!

レベル0:半音階って何?

まず、「半音階」について説明します。英語では「Chromatic scale(クロマティックスケール)」と言い、1オクターヴ中の12個全ての音から成る音階です。ピアノの鍵盤を全部順番に押していけば、半音階のできあがりです。

ピアノは半音階を弾くためにできている!と言っても良いくらい、半音階を弾くのが簡単な楽器です。他の楽器では大抵半音階は非常に難しいです。ハープのように半音階を演奏不可能な楽器さえあります!

とはいえ、始めはどのように弾いてよいか分からないと思いますので、最も基本的な指使いからみていきましょう。

ジャズ・スタンダードの「ブルー・モンク」は冒頭の半音階が特徴的です。半音階の持つ独特の魅力が活かされていますね。

レベル1:1,2,3で弾く半音階(右手・上行)

まずはもっとも基本的な弾き方です。黒鍵は全て3の指(中指)で弾き、白鍵は1(親指)を基本として、連続するところだけ、1-2(親指-人差し指)で弾きます。

半音階を弾いたことが無い方は、とにかくこれを練習しましょう。鍵盤を見なくても素早く弾けるようになるまで練習をします。

ポイントとしては親指を多く使うことになるため、できる限り親指を省エネで動かすことです。中指も同様です。鍵盤から指が大きく離れてしまうと、すぐに疲れてしまうだけでなく、ミスタッチの原因にもなります。地べたを這うように指は低く使いましょう。

レベル2:1,2,3で弾く半音階(右手と左手)

次に右手で降りてくる半音階を弾いてみましょう。

2から始めても良いのですが、少し動きが大きくなりすぎてしまうため、4からスタートしています。指を返さなくてよいところはできるかぎり返さないほうがスムーズですね。

そして、左手でも白鍵1か1-2、黒鍵3で同じように弾くことができます。

レベル1と合わせて4つの半音階(右手・左手それぞれに上下)を紹介しましたが、とにかくこの4つの半音階を弾くことができれば、当分困ることはないでしょう。

ベートーヴェンの3大ソナタに数えられる「悲愴ソナタ」の冒頭です。劇的な表現の半音階がカッコいいですね。

レベル3:両手で弾く半音階

ここまでは片手ずつ半音階を弾いてきましたが、両手で同時で弾いてみましょう。両手で弾くと、2を使うタイミングがズレますので、そこで頭が混乱してしまいます。極めてゆっくり弾くところから始めて、無意識に両手で弾けるようになるまで練習しましょう。

なお、テンポは四分音符=60から始めて、最終的にはその4倍の速さの二分音符=120まで上げたいところです。両手で半音階を弾く機会も多いと思いますので、ぜひ習得しましょう。

技巧派ピアニスト・作曲家のリストの大作「スペイン狂詩曲」です。オクターヴでせきたてるような半音階に圧倒されます。

レベル4:345のみで半音階

1-2-3の指で弾くのが半音階の基本ですが、そのほかの指使いでも弾くことができます。3-4-5は、ピアノが半音階を弾くために出来ているのではないか、と思える理由にもなる指使いです。3-4-5のみで半音階を弾くことができると、1と2の指が空くため、半音階と同時に旋律を弾いたり和音を弾いたりすることができるようになります。

ここでは、白鍵に4、黒鍵に3を基本にして弾くことになります。白鍵が連続するところだけ4-5を用います。脱力がしっかりできていないと、指に大きな負担がかかり、最悪の場合手に痛みが出てしまう場合もありますので、しっかり基本に立ち返り、手と身体の姿勢に気を付けて練習しましょう。

また、白鍵に4を基本にするだけでなく、5を基本にすることもできます。こちらのほうが難しいですが、手を小さく使うことができるため、負担が若干軽減されます。

この指使いは左手でも役立ちますので、両手とも練習しておきましょう。

ピアノの技術が詰まったショパンの「練習曲集Op.10」の2番です。3,4,5だけで半音階を弾きながら疾走する小気味良い曲です。

レベル5:和音の半音階

3-4-5の指で半音階が弾けるようになったら挑戦したいのが、片手だけで和音の半音階を弾くことです。

長2度、短3度、長3度、完全4度、増4度、完全5度、短6度と片手で弾くことができます。それより広いと少し大変です。

両手で弾くと、さらに豪華な効果をもたらすことができます。

また、レガートで弾くには限界がありますが、片手で3和音以上の半音階を弾くのも大切な練習です。

ショパンの代表曲「英雄ポロネーズ」です。序奏の和音の半音階の効果は英雄の名にふさわしい堂々とした響きです。

レベル6:1から5まで使う半音階

1-3の指使いで弾く半音階は弾きやすく、一つ一つの音をしっかり鳴らすことができますので、最も大切な指使いですが、一方で同じ指を何度も使うため、レガートはしづらいです。究極のレガートを目指す指使いを研究してみましょう。

このように、1から始めて弾けるところまで手を返さないで弾く、という方法があります。この指使いで弾くと音が不均等になりやすく、リズムを正確に弾くのも難しくなるのですが、繊細な絹のような美しいレガートを弾くことができる可能性を持った指使いです。ピアノ上級者になったら試してみたい指使いですね。

また、下行形も同じような指使いで弾くことができます。

なかなか1から5に返すという指使いをしたことも無い方が多いと思いますので、手を柔軟にして弾くことを心がけましょう。

ドビュッシーの「練習曲集」より第7番、「半音階のために」です。うつろな響きのなかの半音階は独特な世界観をかもしだします。

音楽に合った指使いを見つけよう

楽譜に書いてある指使いは、平均的な体格の人が弾きやすいように作曲家あるいは出版社によって付けられた合理的なものであることが多いですが、必ずしもあなたにとって最善とはかぎりません。

また、音楽をどのように表現したいかによっても指使いは変わってきます。

まずは楽譜通りの指使いを試すのが良いと思いますが、楽譜や常識にとらわれずに、自分にとって合理的な指使いを見つけていきましょう。とくに半音階は本当に多く指使いの可能性がありますので、ぜひ研究してみてください。