ピアノは上達すれば上達するほど楽しくなってくる楽器です。初心者には初心者なりの、上級者には上級者なりの楽しさがありますので、その楽しさを追っていきましょう。ピアノをこれから始めようと思っている方、ピアノを続けるうちに辛くなってしまった方、昔ピアノをやめてしまってまた再開しようか悩んでいる方、あらゆる方にピアノの楽しさを再発見してもらいたいと思います。

色んな音を鳴らせて楽しい

幼児は音が鳴るものを手にするとすぐそれで遊んでしまいますが、その楽しさは幼児に限ったことではなく一生続くものです。ピアノは単純にたくさんの(フルサイズなら88個の)鍵盤があり、それを押せば必ず音が鳴ってくれます。また、押し方ひとつひとつをとっても、強く叩けば強い音が、そっと押せば弱い音が鳴ってくれます。

子供も大人も、音を鳴らすのは楽しいですね!

簡単な仕組みのようですが、実はピアノにしかない特徴です。誰にでも色んな音が出せる、というのはピアノの最大の利点です。

ピアノ上級者の方もたまにこの楽しさを思い出してください。ピアノの内部の機構がどのようになっているのか、鍵盤が受けた力がどのように音になっているのか、その仕組みを知ると、ピアノをより自在に操れるようになります。

和音を簡単に鳴らせて楽しい

和音を自在に鳴らせるというのもピアノの大きな利点です。ギターやバイオリンも和音を鳴らすことはできますが、それなりに制約があります。ピアノは手の大きさという制約のみで、10個でも15個でも同時に音を鳴らすことができます。(指の数が10本しかなくても、1つの指で2つの音を弾くことができます。なんなら肘で弾いてしまえば40音くらい同時に鳴らすことさえできます)

同時にたくさんの音を弾けるのはピアノならではの特徴です

まずは2つの音を同時に鳴らしてみることを楽しんでみましょう。くっつけて弾く、離して弾く、高いところで和音を作る、低いところで和音を作る、など様々な和音を楽しむことで、和音の性質や、ピアノの響きというものがよりよくわかってきます。

メロディが弾けて楽しい

音楽の基本はやっぱりメロディでしょう。ピアノは出す音に対応した鍵盤を見ることができるため、メロディを弾くのは比較的簡単にできます。普段歌っている曲を、楽器で演奏する、というのもまた特別な楽しさがあります。ピアノはどんなに音感が無くても、正確な音程でメロディを演奏することが可能です。

そして、このメリットは作曲のときにも役に立ちます。頭に思い浮かんだメロディをちょっと鳴らしてみたい、という時にピアノはよく答えてくれます。想像の音を、実際の音にする、ということに関して、ピアノはとても強いです。

曲が弾けて楽しい

右手と左手がそれぞれ動くようになると、簡単な曲はすぐに弾けるようになります。しかも、伴奏と旋律を同時に弾けるようになります。色々な楽器にある「音を鳴らす練習」という部分をあまり気にしなくても良いため、初めて曲が弾けるようになるまでの期間は短くてすみます。また、弾く鍵盤の位置が分かってしまえば、楽譜を読むことができなくても演奏できるため、お手本動画を観ながらでも練習しやすいのがポイントの高いところです。初心者のうちからたくさんの曲を弾くことができます。

レパートリーを増やして楽しい

ピアノ曲は数百年前から今日に至るまで、ずっと作られ続けています。様々なレベルの曲が、数万曲以上あることでしょう。楽譜が読めるようになってきたら、いろいろな曲に手を出してみましょう。著作権の切れているクラシックの曲なら、IMSLPという楽譜アーカイブサイトで大抵の楽譜をダウンロードすることができます。最近のポップスや簡単な編曲などは、Piascoreや、ぷりんと楽譜といったサイトで格安で購入することができます。もちろん、楽譜店にいけば、中身を見て弾けそうだと思ったら買うことができますし、レベル別にまとめられている曲集もたくさん出版されていますので、レパートリーを増やすのに苦労はしません。毎日たくさんの曲を弾くことができます。

ピアノ曲は一生かかっても弾ききれないほどたくさんあります!

レパートリーを増やすのに大切な力は、初見力と読譜力です。初見力とは、初めて楽譜を見た時に、そのまま弾く能力のことです。読譜力とは、楽譜を正確に読んで、自力で音楽を作っていく能力のことです。どちらも非常に大切な能力で、これを身に着けると、レパートリーを増やす速度が各段に上がります。これに関してはまたいずれ記事にしていきたいと思っています。

アンサンブルをして楽しい

ピアノは旋律を弾くだけでなく、伴奏に徹することもできます。伴奏は、ソロよりも繊細で知的な楽しみがあります。ソリストを引き立てるための響きを作ったり、あるいは自分が前に出て音を開放する瞬間を探したり、とアンサンブルはとにかく楽しいです。連弾(1台のピアノを2人で弾く)も楽しいですし、サックスやフルートなどの旋律楽器の人とアンサンブルするのも楽しいですね。音楽の深いところで触れ合うアンサンブルの楽しさは、知ってしまったらもう抜け出せないでしょう。

様々なテクニックを身に着けて楽しい

この段階に入ってくると、本当に楽しいです。とくに「アルペジオ」「半音階」のふたつの技術を身に着けると、手が縦横無尽にピアノの上を駆け巡り、複雑で壮大な響きを作りだすことができます。自分の手だけでこれほどの音楽を作っているということに、弾いている自分でさえ理解が追い付かないほどです。

そして、曲ごとに様々なテクニックがあり、それを身に着けていくたびに、ひとつ、またひとつと魔法を覚えていくような感覚になります。人に聞かせても拍手喝采をもらえるようになるでしょう。ちょっとした全能感まで覚えてしまいます。ピアノを始める方には、ぜひこの楽しさまで味わってもらいたいところです。

音色をコントロールできて楽しい

ある程度までテクニックが身につくと、大抵の曲は練習すれば弾けるようになる、という自信がついてきます。一方で、ここから先に進めるかどうか、という大きな分岐点があります。「色んな音を鳴らせて楽しい」ところで紹介したように、ピアノは鍵盤を押しさえすれば音が鳴ります。だからこそ、1音1音の変化の付け方や、コントロールというのは、他の楽器ほどわかりやすくなくかえって難しいのです。それでもピアノは音色を作ることができます。固い・柔らかい・激しい・鋭い・楽しい・悲しい・痛々しい・輝く・沈む、など様々な表現をすることができます。時には弱音ペダルを使ったり、ハーフペダル(ペダルを少しだけ踏む奏法)を使ったりすることもあるでしょう。弾いている全ての音をコントロールし、音色を作ることができるようになったときの楽しさは、ピアノの深淵を見たかのようです。

色んなピアノを弾いて楽しい

ストリートピアノは新しいピアノに出会える楽しみです

ピアノは移動が難しい楽器ですから、持ち運んでいつでも相棒の楽器で演奏、というわけにはいきません。ただ、逆に多くのピアノとの出会いを作ってくれることになり、それがまたピアノの楽しさです。初めて出会ったピアノに初めましてをして音を鳴らしてみて、それからだんだんと自分の身体に馴染ませていく、というのはとても楽しい体験です。10年ぶりに再会したピアノを弾いてみると、旧友に会ったかのようななつかしさと、ピアノと自分両方の変化を感じることができます。このような楽しさはピアノならではのものといえるでしょう。

自由で楽しい

ピアノを弾き続けていると、ピアノ自体が身体の延長のようになってきます。筆者はピアノを弾きながら寝てしまったことがありますが、周りの人によるとピアノはしっかり弾き続けていたそうです。寝言ならぬ寝ピアノですね。筆者は歌がそこまで得意ではありませんが、ピアノなら音痴になる心配なく自由に演奏することができます。困ったことがあったら困った曲を弾くことができますし、嬉しいことがあったら嬉しい曲、悲しいことがあったら悲しい曲を弾くことができます。映画やゲームの世界ではBGMが鳴っていますが、リアルの世界にもBGMを付けることができます。なんて楽しいのでしょうか!

楽しさは減らない

一度見つけたピアノの楽しさは無くなることがありません。「音が鳴った!」というピアノに初めて触ったときの楽しさは、10年経験を積んでも「弾き方を変えたら全然違う音が鳴った!」という楽しさとして残ります。

初心者から上級者まで、みんなが楽しい!

「和音を簡単に弾けた!」という楽しさも、「新しい曲を見ていたら魅力的な和音に出会った!」という楽しさとして残ります。一度見つけたピアノの楽しみは、一生楽しみ続けられるのです。ピアノは本当に魅力的な楽器です。

それでも辛くなってしまったら

ここまで楽しいを連呼してきましたが、それでも思うように演奏ができなかったり、基礎練習に飽きてしまったり、ということがあるかもしれません。あるいは先生と合わない、ということだったり、他の人と比較して成長が遅いと思い、それが原因で楽しくなくなってしまうこともあるかもしれません。そんなときは、ピアノから少し距離を置くことも大切です。

ピアノに疲れてしまったら、いったん休みましょう

練習がつらい状況は、筋肉が固まってしまいやすく、また視野も狭くなってしまい、ただ指を動かしているだけ、という状況になってしまいます。それでも、指が回るようにはなるのですが、上達しているというよりも慣れているだけですから、悪い癖がつきやすいのもこの時期です。

少し時間を置いてから、あこがれのピアニストの演奏を聞いてみたり、昔弾いた曲をもう一度弾いてみたり、と少しずつピアノの楽しさを取り戻していきましょう。