こんにちは、ピアニストの大瀧拓哉です。今回はピアノの練習をいかに習慣化させるか、というお話をしたいと思います。

ピアノに限らず、何か上達を目指そうと思ったら、やはりできるだけ毎日練習をして、習慣化させることが大切なのは言うまでもありませんよね。しかし、ピアノの練習を毎日欠かさずに行うのって、とても大変ですよね…。プロの演奏家であればもちろん練習に多くの時間を割いていますが、フルタイムで仕事をされていて趣味でピアノを習っている方、家事や育児のかたわら練習される方などが多くの時間をピアノの練習に費やすことや、毎日継続することの大変さは、きっと僕の想像以上だろうと思います。

そこで、今回は少ない時間の中で、できるだけ毎日練習するための工夫を皆様にお伝えしたいと思います。

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執筆者紹介

ピアニスト 大瀧拓哉(Otaki Takuya)

新潟県出身。ドイツ国立シュトゥットガルト音楽演劇大学大学院修了。アンサンブルモデルン・アカデミー(フランクフルト)修了。パリ国立高等音楽院第三課程現代音楽科修了。

2016年フランスで行われたオルレアン国際ピアノコンクールで優勝。フランス、イタリア、ブルガリア、日本、韓国などで多くのリサイタルや音楽祭に出演。

大瀧拓哉の映像レッスンとオリジナル執筆教材は、フォニム ピアノカリキュラムの6ヶ月目・7ヶ月目で好評配信中。
また、ピアノ講座で提出されたホームワーク演奏へのアドバイザーも務めています。
※アドバイスは複数人のチューター陣が担当しています。
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ポイントは3つ。

①自分にとって練習できる時間帯を決めて、ルーティン化する。

②明確な目的意識を持って練習する。

③必ずしも毎日ピアノに触れて練習する必要はないという考えにシフトする。

①自分にとって練習できる時間帯を決めて、ルーティン化する。

まず僕自身のやり方をお伝えしますと、ほぼ毎日、朝の時間帯に最も練習したい曲を練習するようにしています。

僕は基本的に朝型で、1日で最も集中できる時間帯が午前中のできるだけ早い時間なので、朝ごはんを食べた直後くらいに、その日のうちに最も練習したい曲を練習します。

もちろん人それぞれ、1日で集中できる時間帯(や仕事の都合など)が違うと思うので、皆様それぞれに合った時間帯や、練習時間を探してみるのが良いでしょう。例えば毎日夕飯後15分でも練習時間が取れるのであれば、それをルーティン化してしまうと、継続して練習することができるようになるかもしれません。

②明確な目的意識を持って練習する。

ピアノの練習というと、どうしても「まずは指を動かさなきゃ!」と思いがちですよね。お気に入りの曲を気持ち良く弾くことが目的であればそれで良いと思いますし、それはそれで素晴らしいことだと思います。しかし、何か上達したいという思いがある場合、これから何の練習をするのか、プランを立てることは大きな助けになるでしょう。

新しく1曲を始めるのに、1日2日で急激に上達するということは滅多にありません。数週間、数ヶ月など長期的なプランを立て、慌てずに細かく目標を立てると良いでしょう。例えば

・今日はこの4小節を弾けるようにする。

・今日は右手だけ弾けるようにする。

・昨日よりも少しだけテンポを上げて弾けるようにする。

などと考えることができます。少しずつできるようになる感覚が、楽しさを倍増させてくれると思います。

もし曲が既にある程度弾けるようになり、より音楽的な表現を望むのであれば、

・フォルテとピアノの差をもっと付けられるようにする。

・綺麗にディミヌエンド(だんだん弱く)して弾けるようにする。

・より感情が伝わるような演奏ができるように工夫してみる。

などの目標を立てることもできるでしょう

③必ずしも毎日ピアノに触れて練習する必要はないという考えにシフトする。

これを言ってしまうと今回のタイトルの「習慣化」から少し外れてしまいますが、誤解を恐れずに申し上げますと、必ずしも毎日ピアノに触れなければピアノは上達しないということはありません!

移動が多い方や仕事で疲れて家に帰ってきて練習する気が起きない方も、このように思うと少し気が楽になりませんか?

これは決して、「怠けていてもピアノは上達する」というわけではありません。そうではなく、ピアノの練習は、ピアノが無くてもある程度は行うことができるということです。

例えば、

・楽譜を読み込む(曲の構成を知る、コード進行を覚える等)

・指使いを考える

・今練習している曲や作曲家について調べる

・いろいろなピアニストの音源を聴いてみる

・フォニムの動画を見る

などです。

極論を言ってしまうと、今自分が練習している曲がどんな曲なのか頭の中でうまく理解できていなかったり、音が頭の中で鳴っていない状態でむやみに鍵盤上で指を動かすのは、決して効果的な練習とは言えません。

・その曲がどんなイメージの曲なのかを知る。

・曲の構造を知る。

・どうやってその曲を弾きたいか考える。

・実際に指を動かす。

これら4つを常に行ったり来たりすることで、より良い練習を行うことができます。

もちろん、全く指を動かさないと、運動機能として衰えてしまいますし、上達は難しいと思います。しかし、上記のようにピアノから離れた勉強も非常に大切です。それにより、曲に対して頭の中がよりクリアになり、また②で書いたような練習の目的も明確化するでしょう。

「絶対に毎日練習しなきゃ!」という考えに囚われず、通勤時間などの隙間時間をうまく使ってこのようなことを行うことをオススメします。


いかがでしょうか?

前提としてはやはり「上手になりたい」「あの曲を弾けるようになりたい」という意志が何よりも大切です。それにより、目的がより明確化するでしょう。常に好奇心を持って音楽を楽しんで下さい!