こんにちは、ピアニストの大瀧拓哉です!

初めてのブログになりますが、これからピアノ学習者の皆様のお役に立てるような内容や、クラシック音楽をより楽しんでもらえるような内容を書いていけたらと思っています。

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執筆者紹介

ピアニスト 大瀧拓哉(Otaki Takuya)

新潟県出身。ドイツ国立シュトゥットガルト音楽演劇大学大学院修了。アンサンブルモデルン・アカデミー(フランクフルト)修了。パリ国立高等音楽院第三課程現代音楽科修了。

2016年フランスで行われたオルレアン国際ピアノコンクールで優勝。フランス、イタリア、ブルガリア、日本、韓国などで多くのリサイタルや音楽祭に出演。

大瀧拓哉の映像レッスンとオリジナル執筆教材は、フォニム ピアノカリキュラムの6ヶ月目・7ヶ月目で好評配信中。
また、ピアノ講座で提出されたホームワーク演奏へのアドバイザーも務めています。
※アドバイスは複数人のチューター陣が担当しています。
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まず初めに、今回は僕のオススメするピアニストたちのお話をしたいと思います。
ピアノを練習するモチベーションは人それぞれ異なると思います。僕の場合、若い頃から今に至るまで常にあるのが「こんな演奏ができるようになりたい!」ということです。

ものすごい演奏、素敵な演奏を聴いて衝撃を受け、そのように弾けるようになりたいと憧れることがピアノを練習する上での大きなモチベーションになるのではないでしょうか。

オススメのピアニストと言ってもあまりにもたくさんいるので、〜現役最高峰のピアニストたちを聴いてみよう〜と題して、今回は(僕の独断と偏見を含む個人的に大好きな)素晴らしいピアニストたちをご紹介します。

人それぞれ、好むピアニストは異なると思うので、様々な個性を持つピアニストをご紹介します。「これは!!」というピアニストがいたら、是非そのピアニストの他の音源も聴いてみて下さい。

クラシック音楽の深みにハマっていく楽しさを多くの方々に味わっていただきたく思います。

巨匠たち

マルタ・アルゲリッチ

(リスト ピアノ協奏曲第1番)

とても個人的な話ですが、僕がピアノにのめり込むきっかけになったピアニストが、アルゲリッチです。アルゲリッチがいなかったらこんなにピアノを頑張れなかったと言っても過言ではありません。
アルゲリッチは人気、実力ともに世界のトップに君臨する、まさにピアノ界の女王と言える存在です。10代でデビューし、今年80歳を迎えますが、60年以上世界の第一線に立ち続けている奇跡的なピアニストです。

アルゲリッチの特徴は、まずはその推進力にあると思います。リズム感が抜群に良く、グルーヴ感を強く感じられ、理屈抜きに体が反応するような演奏でしょう。

またそれと対照的に抒情的な場面での本能に訴えかけるような歌い方や極上のレガートが秀逸で、一瞬で魂を奪われてしまう魅力があります。特に若いころの演奏は他を寄せ付けない程のスピード感とそれを実現させる恐ろしい程のテクニック、奔放かつ情熱的で煽るような演奏が大きな魅力でした。

80歳近くでも若いピアニストに全く引けを取らない驚異的なテクニックは健在であり、さらに若い頃より深みを増した歌い方が心を掴みます。


グリゴリー・ソコロフ

(プロコフィエフ ソナタ第7番)

ソコロフは飛行機嫌いなためヨーロッパでのみ演奏活動を行っている、正に日本人からすると伝説的なピアニストです。

YouTubeでさえわかるほどに、このピアニストのタッチはすごく独特です。1音1音の歯切れの良さは人間離れしており、猛烈な感情表現を伴いホール全体が包み込まれるような強烈なフォルティッシモを出します。

また、ピアノの中に歌手がいるのではないかと思わせるくらいに濃厚な歌い方も特徴的で、心を鷲掴みにされる非常に強烈な表現力を持っています。

(ショパン ノクターン遺作)

僕はヨーロッパにいたときにほぼ毎年ソコロフのリサイタルを聴きました。特にショパンのソナタ第3番を生で聴いたときは金縛りにあったかのような状態になり、この世のものとは思えないほどの美しさと圧倒的なスケールの大きさと表現力で、僕にとって生涯忘れられないコンサートNo.1となっています。

クリスチャン・ツィメルマン


(ショパン スケルツォ第2番)

ツィメルマンと言えば、完璧主義、正統派、と見做される存在でしょう。音色は輝かしく磨き上げられ、演奏者のエゴを無くし作曲家が楽譜に残した想いをダイレクトに伝えてくれます。

ショパンの故郷ポーランド出身であり、ポーランド独特のリズム感やショパンの心などを現代に伝える正統的ピアニストと言えるでしょう。

ミハイル・プレトニョフ


(リスト 愛の夢)

プレトニョフの特徴を一言で言うとすると「魔術師」でしょうか。ピアニッシモを基調とした、極めてまろやかな音色はそれだけで空気を一変させてしまうほどの魔術的な魅力を持ちます。

また非常に細やかな音色のグラデーションを作り出し、「ピアノってこんなにいろんな音がでるのか?!」と驚かれると思います。

内田光子

(モーツァルト ピアノ協奏曲第9番)

内田光子さんは特にモーツァルトやシューベルトの解釈で世界的に最高の評価を受けているピアニストです。作曲家が伝えようとした作品の核に迫ろうとする強烈な意思の強さがあり、音楽にのめり込んでその作曲家の魂を伝える伝道師的存在と言えるでしょう。

世界を席巻する若手ピアニスト

ラン・ラン

(リスト ドン・ジョヴァンニの回想)

ユジャ・ワン

(リムスキー=コルサコフ/シフラ 熊蜂の飛行)

21世紀に入った頃から、中国人ピアニストが多く台頭してきました。その代表がこのラン・ランやユジャ・ワンでしょう。聴衆を唖然とさせる程の驚異的なテクニックを持ち、またそれまでヨーロッパで受け継がれてきた伝統的な解釈に囚われない、自由で大らかな演奏は世界中の聴衆を魅了しています。

チョ・ソンジン

(ショパン バラード第1番)

韓国もここ数年素晴らしいピアニストを多く輩出していますが、その代表格がチョ・ソンジンでしょう。恐ろしいコントロール能力を持った完璧主義であり、まだ20代ながら非常に思慮深く大人な佇まいの演奏は、心の奥深くに訴える表現力を持っています。

ダニール・トリフォノフ

(ショパン 幻想即興曲)

トリフォノフもソコロフやプレトニョフのように、彼独自の魅力的なサウンドを持ったピアニストです。その輝かしい音色と、電流が走るかのようなストレートかつ大胆な表現力で聴衆を魅了しています。

今回紹介したピアニストはみな、現在バリバリで活躍中です。現役のピアニストの方が情報を追いかけやすいですし、今後生で聴ける機会もありますので、まずは現役のピアニストを紹介しました。

しかし、20世紀にはもっともっとたくさん魅力的で個性的なピアニストがいましたし、また「この作曲家はやはり彼/彼女でないと!」と言いたくなる演奏家もいます。
それらはまた別の機会に紹介できたらと思います。もちろん現役の中にも、他にも紹介したいピアニストはまだまだ山ほどいますが…

また、同じ曲を別のピアニスト(例えばショパンのピアノ曲をアルゲリッチとツィメルマン)で聴き比べると、さらにピアニストの違いがわかって面白いでしょう。同曲異演を比べるというのも、クラシック音楽を聴く大きな楽しみの一つです。

素晴らしいピアニストの演奏を聴き、クラシック音楽を聴く深みも知って、ピアノを練習するモチベーションとしていただけたら幸いです。ぜひまた続編でお会いしましょう。