ピアノは手に入れたのはいいものの、椅子をどうしようか迷っている方はいらっしゃいませんか?まずは正しい座り方をマスターして、ピアノ弾きにとって、どのような椅子が理想なのか見ていきましょう。椅子と座り方を見直しただけで、演奏が改善するかもしれません!

正しいピアノ椅子の座り方

まずはピアノの前にどのように座るのが正しいのかを見てみましょう。ポイントは次の通りです。

①両足のかかとが余裕をもって地面に着き、つま先が自由に動かせる

②身体の前面の延長に、椅子の切れ目があるように浅めに座る

③自然に鍵盤に手を伸ばして腕が地面と水平になり、肘の角度がおよそ90度(あるいはそれよりすこし広い)になる

身長140cm~190cmの方なら、椅子の高さを調整することによって、理想的に座ることができます。身長が低いお子様の場合は椅子を高めにして補助足台(ペダル付きのものあります)を使うと良いでしょう。

ヤマハの補助ペダルAX-T1

理想的な座り方は上で述べた通りですが、実際には演奏者によっても姿勢の好みがあったり、曲によって高さを変えるピアニストもいます。椅子が高ければ、大きな音を出しやすく、速い動きがしやすくなりますが、精密なコントロールが難しくなります。逆に椅子が低ければ、一音一音のコントロールがしやすくなりますが、速い動きは難しくなります。椅子の高さが極端に高かったり低かったりすると、腰や肩への負担の原因となってしまいます。

あまりにも低すぎるピアノ椅子を使っていたことで有名なグレン・グールドは、ピアノ椅子の足を切り落としていたそうです。一流ピアニストになれば正解は自分で作っていくものなのでしょう。

ピアノの椅子にとって重要な要素

椅子には様々な種類がありますが、それは目的が様々だからですね。回転椅子、安楽椅子、座椅子、パイプ椅子、ベンチ・・・どれも用途に合えば最高の椅子ですが、用途に合わなければいくら高級品でも不便です。ピアノのための椅子にはどのような要素が重要なのでしょうか。

高さ

ピアノの鍵盤は、床から大体70cmから75cm程度です。食卓と同じかわずかに高い、といった感じですね。

人によって理想の高さが違ってくるのはもちろん、曲によっても理想の椅子の高さが変わってくることがありますので、椅子の高さを変えられることはピアノ椅子にとって重要です。ただし、ピアノ初心者の方が一人で練習する場合は、高さをあまり変える必要はありません。また電子ピアノの台座によっては、ピアノのほうの高さを変えることもできます。

重さ

楽器の演奏はスポーツのようなもので、全身を使います。そのような体重移動に耐える程度の重さが必要です。ピアノ椅子は通常の椅子より重めに作ってあることが多いのですが、電子ピアノの付属椅子だと軽いこともあります。持ち運びも考えるなら軽い椅子を選ぶのもアリですが、なるべくずっしりとした重さがある椅子が理想です。

静音性

パイプ椅子だと体重移動によって金属のギシギシ音が鳴りやすくなってしまいます。ピアノ専用の椅子であっても、経年劣化によってギシギシ音が鳴ってしまう場合があります。このような音が鳴らないような椅子を選ぶことが重要ですが、後述する潤滑スプレーによってかなり緩和することも可能です。

安定性

ピアノは体重移動が多いと書いてきましたが、それは体幹が安定しているうえでのことです。回転椅子のような可動式の椅子はピアノの椅子には向きません。また、座面が柔らかすぎても身体を安定させることができないため、ある程度硬い座面である必要があります。

背もたれ

これはあっても無くてもどちらでも良いのですが、背もたれがあると、小さなお子様は後ろに倒れる心配がなく安心です。逆に格調高い演奏会では、ドレスや燕尾服を着用して演奏することがありますが、これらの服の邪魔になってしまうため、背もたれのない椅子が採用されます。

幅の広さ

ピアノは体重の移動が多い楽器ですが、お尻を動かすことはほとんどありません。ですので、座ったとき安定するだけの広さがあれば十分です。ただし、あまりにも音域の広い曲だったりすると少し広めの椅子のほうが便利なことがあります。連弾をするときは、広い椅子に2人で座るか、2脚の椅子を使います。

水平性

ピアノ椅子として使うには、水平である必要があります。安楽椅子のように傾きがあると、演奏は全くできなくなってしまいます。椅子に体重をしっかり支えてもらいつつ、身体が動きやすいのは水平な椅子です。

ピアノ専用椅子の徹底比較!

それでは定番のピアノ椅子を紹介していきます!椅子選びの参考になれば幸いです。

ヤマハピアノ専用椅子No.5

ピアノ椅子といったらコレ!の定番品

まず練習用のピアノ椅子として最もよく見るのが、ヤマハのピアノ専用椅子No.5です。

長い間多くの方に愛用されてきた、定番中の定番ですね。

・メリット

背もたれがついているので子供でも安心

高さの変更がすぐにできる

ずっしりとした安定感がある

・デメリット

背もたれがあるため、ドレスでは座りずらい

若干高価

☆こんな方におすすめ

ピアノを始めた小さなお子様

アップライトピアノや、グランドピアノといったアコースティックのピアノを力強く弾きたい方

ピアノ教室の先生

KORG高低自在椅子 PC-300

シンプルでありながら弾きやすさを考えられたピアノ専用椅子

優れた電子ピアノを多数発売しているKORGのピアノ椅子です。シンプルなデザインながら、安定感があり、高さ調節もできるため、エントリーモデルとしては最高です。

・メリット

高さの微調整ができる

コンパクトなサイズで、部屋のデザインにマッチしやすい

6.7kgと十分な重量がある

安価

・デメリット

激しい演奏には安定感が少し不安

☆こんな方におすすめ

電子ピアノで練習している方

ピアノの練習を始めた大人の方

RAKUピアノ椅子楽譜収納付き

機能性抜群の楽譜収納付きのピアノ専用椅子

生活雑貨やゲーミングチェアなどを販売しているRAKUは、ピアノ椅子も豊富な種類を販売しています。その中でも特におすすめなのが、楽譜収納付きピアノ椅子です。

・メリット

座面のクッション性が適度

深さ4cmの楽譜収納ボックス付き

高さの微調整が可能

・デメリット

高さをあまり低くできない

☆こんな方におすすめ

自宅で練習していて、少し良いピアノ椅子が欲しくなった方

楽譜棚をまだ持っていない方

小学校高学年以上のお子様

ヤマハピアノ椅子No.150

圧倒的な風格を備えたピアノ椅子の最高級品

格調高く、どんな演奏会にも使える最高級の逸品です。この椅子が演奏会ホールに置いてあると、ワクワクするような、そんなピアノ椅子になっています。

座面のクッションは適度にやわらかく、それでいて安定感のある素晴らしいピアノ椅子です。

・メリット

重さがあり、座面に安定感がある

高さの微調整ができる

十分な広さがあり、どんな曲を弾くときにも対応できる

・デメリット

高さの調節に時間がかかる

非常に高価

☆こんな方におすすめ

グランドピアノで本格的に練習している方

演奏会ホールで使用する方

ピアノ椅子を買う勇気は出ない…家の椅子で代用したい!

自宅での練習用のピアノ椅子は1万円弱で購入することはできますが、とはいえピアノ専用椅子を買うほどでは…と思う方もいらっしゃいますよね。そんなあなたに、ピアノ椅子に代用できそうな椅子を探してみました!

ダイニングチェア

このような椅子ならピアノ演奏にもバッチリ!

ダイニングチェアはピアノ椅子に近い形状になっていますので、代用することが可能です。ただし、

・ひじ掛けがないもの

・可動部が無いもの

を選んでください。

理想的なピアノ椅子より低くなっていることが多いため、電子ピアノなどで台座の高さの変更が可能な場合は、台座を少し低めにすることをお勧めします。

丸椅子

短時間の練習なら、意外と便利な丸椅子

簡易的な丸椅子も、意外とピアノに適した椅子になっています。ただし、軽くて安定感がないため、激しい曲を演奏するときは椅子を膝で抱え込んで固定するような形になります。ピアノ初心者の場合は特に違和感なく使えるでしょう。高さは50cm程度のものが理想です。

パイプ椅子

教室や施設では採用されることも多いパイプ椅子

パイプ椅子も、ひじ掛けが無く安定感があり、電子ピアノの演奏にはそれなりに適した椅子になっています。ただし、やはり低さが気になることと、座面が水平になっていないことがあるのが注意ポイントです。また、金属のきしみ音も少し気になってしまいますね。ヘッドホンを付けての練習ならきしみ音はあまり気にならないのでおすすめです。

ピアノ椅子のギシギシ音(きしみ音)対策

ピアノ椅子は経年劣化でギシギシと金属のきしみ音が鳴ってしまいます。このようなときは、金属の結合部に潤滑剤をスプレーしましょう。ピアノ椅子の高さの可変部から鳴ることが多いのですが、音の場所を特定するのは難しいので、とりあえず全ての金属結合部にスプレーしてしまいましょう。(スプレーは風通しのよい外部で、自己責任でお願いします)

5-56 防錆潤滑スプレー

びっくりするほど軋み音が無くなります

潤滑スプレーの定番品で、ピアノ椅子や、ペダルの軋み音対策の強い味方です。一本購入しておくと、役に立つことも多いと思います。

ピアノの椅子の高さや座り方を少し修正しただけで、劇的に弾きやすくなった、という方もめずらしくありません。今まで椅子を気にしたことが無かった方もこれを機会に見直してみたらいかがでしょうか。