コード譜というものがあります。演奏する全ての音を書くわけではなく、和音の種類だけ書かれた楽譜です。ギターでは広く受け入れられていますが、ピアノでコード譜を弾くのは苦手、という方も少なくありません。ステップアップ方式で、コード譜を弾いていきましょう!

ここは簡単にできるな!というところは読み飛ばして進めてください!

今回挑戦するのは、有名な讃美歌で様々にアレンジされている「アメイジング・グレイス」です!

とてもシンプルな楽譜ですがこれを弾いてみましょう!

レベル0:旋律を読む

まずは、旋律を右手で弾けるようになるところからスタートです。

3連符がでてきたりとリズムがややこしいですが、1拍目は二分音符で3拍目に旋律が動く、というリズムが一貫していますので、そのように思うと弾きやすいかもしれません。楽譜にまだ慣れていないという方は、ドレミを楽譜に書き込んでみましょう。

これが右手で弾けるようになったら、いよいよスタートです!

レベル1:アルファベットを読む

コードは、英語の音名を元に作られています。英語の音名(C、D、E、・・・)とイタリア語の音名(ド、レ、ミ・・・)は次のように対応しています。

アルファベットはラからA、B、C、・・・と始まっていることに注意してください。

コードはアルファベットにいろいろ数字や記号がついていますが、まずは大文字のアルファベットだけ読むと次のようになります。なお、2小節目には何も書かれていませんが、これは前の小節のCが延長されています。

アルファベットと音が対応している感覚を掴めましたか?これを旋律と同時に弾くともう伴奏付きのアメイジング・グレイスの完成です!

なお、この大文字のアルファベットのことを、コードの「ルート」と言います。この言葉はよく出てくるので覚えておくようにしましょう。

レベル2:5度上の音を足す

さらにここから本格的なコード演奏をしていきましょう。コードは色々な和音を表していますが、ほとんどの和音に共通していることがあります。それは、「コードの5度上の音は大体入っている」ということです!

5度というのはその音から数えて5番目にある音のことです。例えば、ドの5度上は、

ド・レ・ミ・ファ・ソ

と数えて、ソになります。

音程について詳しく知りたいという方はこちら⇒【コードの理解に必須!】インターバル(音程)とは

ちょうど小指から親指までの距離となって、弾きやすいですね。5度の感覚をよく覚えてその音を同時に弾いてみましょう。先ほどの楽譜に単純に5度を足してみますが、ファは少し高くなってしまうので、下げました。(また、ここから音が増えてきますので、楽譜のドレミは省略します)

これでもうまくいっているようなのですが、少し注意が必要です。実は、このような5度上が単純に成り立たないコードが2つあります。それは、オーギュメントコードとディミニッシュコードです。

オーギュメントコードは「⁺」、ディミニッシュコードは「゜」を付けて表します。

次のような表記法もあります。

細かな違いはありますが、今は縦に並んだ3つの記号は同じ意味だと思ってもらって問題ありません。

10小節目のC⁺が該当しますね。ただし、今回は無視してこのまま弾いてしまいましょう。

4小節目、12小節目は右手と左手がぶつかってしまうので、左手の音を省きました。

左手の指使いは全て小指と親指で構いません。

レベル3:コードの意味

とりあえず、大文字のアルファベットと5度上の音を弾けばひとまずコードをそれらしく演奏することはできますが、ここで、コードの意味をしっかり知りましょう。

コードが意味するものは、次の三つです。

・ルート

・和音の種類

・ベース

ルートとは

和音は3度堆積というルールで作られます。これは、音を一つ飛ばしで重ねていって和音をつくるというものです。その3度堆積の土台となる音がルートです。

和音の種類とは

3度堆積で和音をつくるわけですが、特に第3音や第7音は♭がついたり♯がついたりと揺れ動きやすい音になっています。また、第5音までしか重ねないパターンもあれば、第11音、第13音まで重ねる場合もあります。それらを確定させるのが和音の種類です。(第七音のように漢数字を使うのが一般的ですが、ここでは読みやすさを考慮して算用数字を使います)

まずは基本的な3つの和音の種類「メジャーコード」「マイナーコード」「セブンスコード」を知りましょう。

メジャーコードは第3音が高く、マイナーコードは第3音が低くなります。メジャーとマイナーがわからなくなったら、第3音を上下に動かしてみるとわかりやすいかと思います。ただし、こればっかりは慣れるしかありませんね。

セブンスコードは、メジャーコードに、第7音を足したものですが、第7音は短7度といって、7度のなかでは音程が低いことに注意します。これも理屈より慣れを優先しましょう。

また、今回のアメイジンググレイスに出てくるもう2種類も紹介します。

サスフォーは第4音を使う特殊な和音です。オーギュメントはメジャーコードの第5音が半音高くなった形をしています。

ベースとは

ベースは、その時になっている一番低い音のことです。何も表示されていなければ、ベースとルートは一致します。ベースとルートが一致していないときは、分数のように書きます。

このようにオシャレな和音をたくさん作ることができますが、これは上級なので、紹介だけにとどめておきます。

では、このコードに従って、アメイジンググレイスに和音を付けていきましょう。ひとまず、ここでコードは完成となります!

レベル4:ヴォイシング

さて、和音が理解できたところで、ここからピアノでいかに綺麗に弾いていくか、ということになります。

同じ「ド・ミ・ソ」を弾くにしても、どの高さのドを弾くか?などはコード記号には書かれていませんので、演奏者が自由に決めてよいのです。つまり、ここから演奏者のセンスが問われてくるわけですね。

このようにコードをどの高さでどのように音を作るか、ということをヴォイシングといいます。

綺麗なヴォイシングとは、次のようなものです。

・低音が密集しない

・和音の変わり目で音が大きく動かない

・オクターヴを極力少なくする

ヴォイシングはベーシストがいるのか、ピアノソロなのかによっても変わってきますし、クラシック風に演奏するのかジャズ風に演奏するかによっても変わってきます。今回は、レベル3で作った和音をスムーズに繋げるような方法を考えてみましょう。始めの和音として、次のようなものが考えられます。

1つ目は、ルートがベースになっており、どっしりとして安定感がありますが、低音で密集してしまっています。2つ目は密集感はそれほど強くなく、また安定感もありますが、旋律とのオクターヴが少しきになります。3つ目は低音で密集せず、バランスは綺麗なのですが、浮遊感があり落ち着きが少ないです。

どれも一長一短ですし、短所は長所に、長所は短所になりえます。今回は2つ目を採用してみましょう。

CのあとはFとなっていますが、CとFではドの音が共通しています。共通している音は同じ高さで弾きたい、ということを考えると、4小節目までで、次のようにヴォイシングができます。

左手の動きが非常に少なく、弾きやすいと思います。

では、この調子で最後まで続けていきましょう。

最後は少しテクニカルになりましたが、レベル3のときよりもかなり洗練されて聞こえるのではないでしょうか?

レベル5:アルペジオ

今は和音を小節の頭に一回ずつ弾いているだけですが、和音をばらして弾くだけでリズムができあがり、またピアノらしい音になります。たとえば、Cというコードは次のように弾くことができます。

和音を構成するドとミとソをバラバラに弾いています。このように和音をばらばらに弾くことを分散和音あるいはアルペジオと呼びます。ピアノのキラキラした優美な響きはアルペジオで作られていることが多いです。

アルペジオの仕方もたくさんありますので、これもヴォイシングと同じように奏者のセンスが要求されます。また、左手が大きく動くことになるので、ピアノに少し慣れている必要があるでしょう。このアルペジオを使ってアメイジング・グレイスを弾いてみましょう。

アルペジオはピアノのペダルと非常に相性の良いテクニックです。旋律が濁らないのであれば、ペダルはたっぷりつかっていきましょう。とくに、右手が二分音符で伸びているようなところは、ペダルを踏みっぱなしにすると綺麗です。

ここまでできると、ひとつの楽曲として成り立っているように思えますね!

レベル6:テンションノート

ここまでは、コードをそのまま弾いてきましたが、ここからさらにレベルを上げて、コードに書かれていない音も弾いてしまいましょう。このようなコードの外にある音をテンションノートといいます。

さて、コードをおおきく3つに分類します。

・メジャー系列

・ドミナント系列

・マイナー系列

さて、この3つの系列にそれぞれ音階を作ります。

この音階は次のように見ます。

・色の付いた音は必ず使う

・特に意図がなければ、(  )の中の音符は使わない

・鉤括弧でくくられた音は同時に使わない

・コードの数字が書かれていた場合、その数字に対応する音を使う

あとは、音階内の音を自由に使いましょう!

たとえば、Cというコードはメジャー系列の和音で、ド・レ・ミ・ファ♯・ソ・ラ・シの音をミさえ入っていればどのように使っても構いません。たとえば、次の和音は全てCというコードです。

そして、次の和音は全てAmです。

なお、Aをルートとするマイナー系列はこのようになります。

こんな声が聞こえてきそうです。

「いやいや、これじゃあどんな和音弾いても、Amだと言い張ればAmじゃないか!」

そうですね、それもあながち間違いではないかもしれません。ぜひ色々な和音を弾いて、自分だけの和音を作っていきましょう。

このようにテンションノートを入れたコードでヴォイシングした例を紹介します。

複雑でオシャレな響きになりましたね。

レベル7:右手も使用したヴォイシング

レベル6ではベースがルート以外の音になっていました。これは左手の小指でベースをとってしまうと、使える和音に制約がでてしまうからですが、右手でも和音を弾いてしまえば、さらに自由が広がり、ソロでも成立する豊かな響きを作り出すことができます。右手の中指、薬指、小指が自在に動かせるようになったら、挑戦してみましょう。

ここまでくれば、ソロのピアノ作品として完成しているほどの出来栄えになりました。

レベル8:自由に弾く!

ここまでもかなり自由に弾いてきましたが、それでも規則的なルールに従っていました。

実際の音楽はもっと自由です。一方で、制約があれば音楽に統一感をもたらします。

・リズムはスタイルにあっているか

・和音の複雑さに統一感はあるか

・前後がスムーズにつながっているか

・共演者がいる場合は、しっかり世界観を共有できているか

など、様々なことを考えて自分だけのアレンジを手に入れてみてください。何よりも自分の聴覚とインスピレーションに頼り、例えルールを破ってでも、良いサウンドだ!と思ったものは怖がらずにどんどん取り入れていきましょう。

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