ヴァイオリンをこれから始める方や、始めたばかりの方が読みたい決定版の本を集めました。
具体的なテクニックのトレーニング本ではないので、まだ全く知識が無くても大丈夫。
明日からの練習のモチベーションが湧いてくること請け合いです。

私のヴァイオリン 前橋汀子回想録 (早川書房)

世界に誇るヴァイオリニスト前橋汀子さんが、1960年代に17歳の若さで渡った旧ソ連での苦労に満ちた留学生活、その後の名演奏家たちとの交流、現在に至るまでのキャリアをユーモラスに、読みやすい文章で淡々と綴っています。

音楽に対する真摯な姿勢に心打たれる、爽やかな読後感の残る一冊です。
ヴァイオリンを手にとったばかりのあなたにも、きっとプラスの影響があるに違いありません。

"二人の伴奏者は、レッスンのときだけでなく、毎日の練習のときも付き合ってくれました。しかも、「テイコ、いつ練習する?」「明日は何時から?」と、向こうから声をかけてくれるのです。これがソ連の伝統的な音楽教育でした。助手も伴奏者も、日本の音楽教育システムには存在しません。ひとりの際立った才能を育てるために、高度な技術や教養を持った人たちが周囲で支える。そういう厚い層の人たちに育てられた音楽家が、また同じようにあとに続く者を指導する。…"

一流ヴァイオリニストとして名を馳せ、またたく間に社交界を駆け上がっていく様子も見ることができます。

"ニューヨークの楽器商ジャック・フランセの店で「バレストリエリ」に出会いました。弾かせてもらうと、私の小さな手にもしっくりきます。「これだ!」と思いましたが、手持ちのヴァイオリンを買ったときの倍の値段です。そんな大金はあるはずもなく、手に入れるには資金を工面しなければなりません。(中略)紹介されたのが、チェース・マンハッタン銀行のデイビッド・ロックフェラー氏でした。アメリカ屈指の名門ロックフェラー家の三代目であり、実業界の超大物です。…"

ヴァイオリニスト20の哲学

帯にある『「一生懸命」では生ぬるい、がむしゃらにやらねば』というフレーズの通り、日本を代表するヴァイオリニストである千住真理子さんによって書き下ろされた、「物事に取り憑かれたように取り組む」ことをテーマとした本です。

"一方で、夢中になってさらう人はどうでしょうか。練習だって楽しくてたまらないのです。だから、もっともっと練習したい、時間を忘れて弾いていたい、食事をするのさえ忘れて没頭してしまうのです。(中略)好きこそものの上手なれ、と昔から言われていますが、まったくそのとおりなのです。たとえ不器用な人だとしても、たとえ下手だと言われる人でも、「好きだからただ夢中になって努力しているだけです」という人の夢はかないます。スピードが遅くても、必ずその人の夢はかなうのです。"

プロフェッショナルを目指す人にとってはそのままガイドブックとなる本であり、そうでない人にとっても、表現者としての一歩を踏み出す大きなヒントが得られるでしょう。

"一二歳でプロデビューした時には、日常にやらなくてはならないことがあまりに多すぎて目が回る状態でした。(中略)先生は、学業とヴァイオリンの練習との両立に苦しむ私に、ある日指をパチンッと鳴らして、こうおっしゃいました。「これで頭のスイッチを、パッと切り替えられなきゃダメですよ。」意味を考えている私に、先生はさらに「まるでテレビのチャンネルを替えるように、頭の中を切り替えるのですよ」とおっしゃったのです。あのときの先生の仕草、頭の斜め上にまで手をあげてパチンッと鳴らした指の音、その映像とともに私の中には、切り替えるチャンネルが作られたのでした。"

バイオリニストは目が赤い

30年以上の長きにわたってNHK交響楽団の第一ヴァイオリン奏者を務めた蘇我裕子のエッセイ集です。
筆者が強度の近視で、連日細かい楽譜を見続けて目が充血しているのが常態化してしまったというところからタイトルがつけられています。

具体的なテクニックを学ぶような本ではありませんが、オーケストラの裏も表も知り尽くした筆者の軽妙な文章で、プロの世界が身近に感じられるようになるはずです。
ヴァイオリンを聴きに行くのも大好きなあなたにおすすめの一冊。