子どもが楽器を習い始める時、色々考えることがありますよね。「どの楽器が良いのだろう?」「先生はどうやって探すの?」「何歳から始める?」など、質問が湧いてくるでしょう。


この記事では以下のことについて書いていきます。


①楽器を始める目的

②始めるタイミング

③習う楽器の選び方

④先生の選び方

⑤日々の練習


ーー

この記事を書いたひと


ラーセンみどり

ニューヨーク在住のピアニスト、ピアノ音楽博士(Ph.D. in Piano Performance)。ニューヨークのアジア系芸術家をサポートする機関、エイジアン・アメリカン・アーツ・アライアンスのアーティスト・イン・レジデンスとして選出された。ピアノ教授法の研究者としても活躍し、過去に査読論文執筆、アメリカ国内外のカンファレンスで研究発表も行っている。


ーー

①楽器を始める目的

まず、親として子どもに楽器を習わせるそもそもの目的を考えておくと、その後の色々な場面をクリアしていくのにとても役に立ちます。どの楽器を習うか、どんな先生につくか、また練習の時に困ったときも、「何の目的で楽器を習わせたいと思ったんだっけ?」と思い出すと、答えが自ずとわかってくるでしょう。


例えば、音楽を楽しむために楽器を習わせたいと思った場合、その考えを理解してくれる先生を探して、先生にも説明しておきます。すると、子どもが、「疲れた。練習したくない。」と言った時は、「そうなんだね。ママ(パパ)から先生に説明しておくよ。」と言って、先生にもそれほど申し訳ない気持ちを持たずに済むでしょう。


そして、楽器を習うことは様々な人生勉強にもなります。楽器を習うことで忍耐力や継続力をつけてもらいたい、何かを達成する喜びや自分を表現する喜びを味わって欲しい、という目的も素晴らしい目的です。要は、楽器を上手に弾けるようになることが目的なのか、楽器を習うことで得られるスキルや体験が目的なのか、というところです。


②始めるタイミング

始めるタイミングは、ズバリ、子どもが興味を示したタイミングが最適のタイミングです。どうしても親としては「うちの子に才能があるかもしれないからまず早めに芽を出させてあげたい!」「将来プロになるというキャリア選択も与えられるように、早くから始めさせたい!」と意気込んでしまいがちです。もちろん、子どもの可能性を広げるためにあれこれ試そうとするのはとても素晴らしいことです。


しかし、私が今まで見てきた生徒さんで一貫して言えるのは、本人に興味がないと無理が生じてやがて続けるのが困難になる、ということです。性格や成長の具合で「始めるのはもう少し後でも良いのにな」と感じる生徒さんもいます。


特に小さい頃は指が柔らかすぎて、たとえばピアノを弾く指の形を保てない子どももいます。変な弾きぐせをつけてしまうと後で直すのに苦労するので、やはり本人に合ったタイミングで始めるのが理想です。例えば、ピアノに興味を持っているのだけれど身体の成長ぐあいでもう少し待ったほうが良い、という場合、リトミックなど他の形で音楽の感性を磨くこともできるのです。


③楽器の選び方

「どの楽器を習わせようか?」と迷ったら、まずは子どもに聞くのが良いでしょう。どんな音のする楽器が好きか、どんな弾き方の楽器が好きか。リズム遊びが大好きならドラムやマリンバ、ピアノなどが合っているかもしれないし、歌うのが大好きなら弦楽器や管楽器が合っているかもしれません。

まず楽器屋に行って、あれこれ片っ端から触らせてもらったり、生演奏を楽しめるコンサートにたくさん行くというのもおすすめです。CDなど録音された音楽でも良いですが、やはり生の音、しかも質の高い音楽に触れさせるのが一番良いです。


気分によってコロコロ好みの楽器が変わったりするかもしれません。それもまた、良いでしょう。ひょっとしたら様々な楽器を使ってオリジナルの作品を作り上げる作曲やサウンドプロダクションに興味があるのかもしれません。「色々な楽器に興味があるんだね。」と言って、会話を楽しんでください。


④先生の選び方

感受性の高い子どもにとっては、先生はそれはそれは大事な存在となります。先生に言われること、良いことも悪いことも、将来に大きく関わってくる可能性が高いからです。①の楽器を始める目的に戻りますが、この目的がより明確だと先生が選びやすくなります。


例えば、将来プロにならなくとも楽器を習うことで培った表現力、忍耐力、判断能力などを別の分野で活かせるようになるのが目的だとします。すると、同じような考え方の先生を探すことで、レッスンのたびに先生と「今ここでこんな問題が発生しているけれど、これを解決するにはどうしたら良いと思う?」というような会話、実践がたくさんされることでしょう。もちろん、プロになることが目標であれば、プロになるために必要なトレーニングを順序立ててしっかりサポートしてくれる先生を探すのが必至です。


どんな目的だったとしても、一貫して言えることは、先生は先生としての経験が豊富で、教えることが上手で熱心な人を選ぶのが良いです。プロの演奏家でも教えることが苦手、不得意の人は実は大勢います。伝えることが苦手な先生から学べることには限りがあるでしょう。反対に、説明がとても上手で、どんな人にもわかりやすいように明確に伝えることができる人は、例え演奏家としての経歴がそれほどきらびやかでなくても、子どもにとって最高の指導をしてくれます。そういう優れた先生は、もし生徒がぐんぐん上達して、自分の与えられる知識やスキルより上のものを必要としていると感じた場合、きちんとそう伝えて次の先生への架け橋を担ってくれることでしょう。


⑤日々の練習

楽器を習うことで一番気になることは練習についてでしょう。音楽でなくても何でもそうですが、練習をすればより上達します。ですが闇雲に「とにかく練習させないと!」と意気込む前に、ここでもまた子どもに楽器を習わせるそもそもの目的に戻ります。何のために楽器を習わせようと思いましたか?音楽を楽しんでもらうことが目的だった場合、練習を強要してしまってはその目的が叶わなくなる可能性もあります。


「昔は好きでやっていた楽器だけれど、先生や親が厳しすぎて練習が辛くなってやめてしまったことが残念です。」という話をよく大人から聞きます。楽しむことが目的なら楽しさをキープできる程度の練習量にすることで継続することができるでしょう。すると継続することで達成感が得られて、子どもの精神的な成長とともに、自発的に練習をしたいと思うようになることは往々にあるのです。


そして、練習を継続するには保護者のサポートが不可欠です。子供は初めから自発的に練習する習慣もないですし、効率良い練習方法を知っているわけでもありません。そこは保護者がかなり密に関わって、効率良い練習を習慣づける必要があるのです。では保護者が音楽家でないとそれができないのでしょうか?いいえ、もちろんそんなことはありません。音楽の知識にかかわらず、協力的な保護者は、誰でも強力なサポーターになります。大切なのは練習の習慣づけと、先生の練習メニューに沿って練習するサポートをすることです。

いかがでしたか?

子どもが楽器を始める時に知っておくべきことでここまでお話してきましたが、みなさんお気づきの通り、一番大事なのは①の楽器を始める目的です。楽器を始めるということは子どもにとって素晴らしい体験になります。是非親子のクオリティータイムとして大切に楽しく過ごしてください!