以前、3連符の記事を公開しましたが、連符には3連符以外にも多くのものがあります。よく見るものから、マニアックな連符まで、いろいろ見ていきましょう。
5連符
5連符は比較的よく現れます。ただ、厳密に1拍を5等分するというよりかは、5つの音を1拍の中で自由に歌う、というパターンが多いです。特にターンという装飾音は5つの音符から成るため、これを5連符で書くことがあります。
6連符
6連符は良く見るような気がするのですが、探すと実はあまりありません。6連符ではなく、3連符二つで書いているパターンが多いからです。
3連符2つを使うか、6連符を使うかというのは作曲者の好みも大きいですが、大きく捉えてほしい時に使う傾向があります。
3連符2つのときは、4つめの音がピッタリ拍に合っていないといけないイメージがありますが、6連符のときは、6つの音の中で自由に演奏できるイメージがあります。
7連符
7連符は正確に等分することがほとんど不可能なため、自由に演奏するパッセージの音符の数が7つだった、というような場合に使われます。
9連符
9連符もほとんど事情が一緒ですが、3+3+3連符に分けることができる場合があります。このときにどちらを採用するかは6連符の時と同様の問題です。
10連符以上
10連符以上の連符もあります。このくらいの連符になってくると、全体の長さも正確である必要はなく、即興的に演奏することになります。
2連符
1拍が三分割されているような拍子、たとえば、6/8拍子や、9/8拍子といった拍子には、2連符が使われることがあります。また、3/4拍子といった、大きな三拍子の中に2つの音を入れたい場合は2連符を使います。2連符を使わずに、付点で書くことも出来ます。
付点四分音符の拍に、2連符を入れるとき、八分音符で書くべきか、四分音符で書くべきか迷ってしまいますが、このときは、付点で代用できる方を書きます。つまり、八分音符の二分音符となります。
厳密なルールは後の項で説明します。
4連符
4連符には独特の情緒があり、曲に浮遊感を与える効果があります。
2連符と同様、1拍を3つに分けられる拍子のときに登場します。これも、付点で代用できる音符を採用します。
このようにしてみると、1拍を4等分しているので十六分音符、というのがわかりやすいですね。
なお、1拍を4分割するときはこのような考えで連符を書きますが、3つの音符の代わりに1つ多く音符を入れる、という場合は、3つの音符と音符の種類を揃える場合があります。
これは1拍を4等分したわけではなく、3拍に4つの音符を入れていると考えているのですね。
次の項目では、どの種類の音符を使っていけばよいのかを考えましょう。
どの音価の音符をつかうか
音価とは音の長さのことですが、基本的に音符は全音符・二分音符・四分音符・八分音符…といった二等分くぎりでの音符しかありません。これを連符に当てはめるとき、どの音符を使えばよいのでしょうか。
①音を追加して連符にしたと考え、追加する前の音価で書く
ほとんどの場合、このパターンとなります。四分音符を5等分する場合は、4等分していた十六分音符に1つ音を追加した、というイメージです。11連符なら、8等分していた三十二分音符に3つ音を追加したというイメージです。
このルールさえ知っておけば、基本的には迷うことなく連符を書くことができます。
②複合拍子の場合、1拍の音価を基本の音価に揃え、それに①を適用する
説明が難しいので、具体例で話します。6/8拍子のような、2拍子でありながら1拍が3等分されている拍子のことを「複合拍子」と呼びます。これは、2/4拍子の各拍が3連符になっているのと本質的に同じ拍子です。
そして、この2/4拍子に直した後に、①のルールを適用させるように考えます。たとえば、1拍に5個音が入る場合は、十六分音符を用います。
10/8拍子のようなややこしい拍子の場合も同様に考えます。これは2/2拍子の各拍が5等分されていると考えます。
そして、この2/2拍子に直したあとに、①の考えを適用させるので、1拍に4~7個の音符が入るときに八分音符を用います。
③イメージに合う音価を用いる
①や②というルールはあるものの、作曲家のイメージに合わせて自由に連符が書かれることもあります。
たとえば、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番は2/2拍子なので、八分音符8つや9つの塊が2分音符分の長さになります。明記されてはいないものの、これは8連符と9連符です。
しかし、①の考えを用いれば、次のように書くのが本来のルールです。
こう書かなかったのは、いろいろな理由があると思います。
・7連符以下と8連符以上で音符の種類を変えるのを嫌がった
・八分音符のほうが即興的で自由な印象がある
・八分音符のほうが重厚さがある
・八分音符のほうが楽譜の見た目がすっきりする
実際に何を考えてこのような書き方にしたのかは不明ですが、八分音符のみで書いたほうがすっきりしているのは間違いありません。
変わった連符
さて、ここまではクラシック音楽でよく使われる連符を見てきましたが、現代はさらに自由に連符を用いています。ここでは色々な連符を見てみましょう。
比率連符
たとえば、4/4拍子で八分音符3つ分に5個の音符を均等に入れたい、と思ったら、通常の書き方で表すことができません。このような場合は比率連符を使います。比率を使う場合は、
入れたい音符の個数:本来の音符の数
とします。
この例では、5個の八分音符が、本来3個の部分に入る、という意味になります。
対音符
上記の例だと、少しわかりにくいという場合は、次のように書いて、付点四分音符の音価を5等分する、と表すことができます。これが見やすくなっているかは人によるとは思いますが、より直感的になっています。
入れ子の連符
また、連符の中に連符が入ってくる場合もあります。あまり複雑なことをやりすぎると人間には演奏不可能になってしまいますが、次のようなパターンでは比較的見かけます。
だんだん速くなる・遅くなる連符
さらに変わった連符として、均等に等分しない連符があります。その書き方が面白いので紹介します。
これは、二分音符の中で、八分音符くらいの速さからだんだん速くしていって、三十二分音符程度の速さにしてね、という記号です。作曲家のアイディアには脱帽させられますね。
連符を演奏するときの心構え
音楽は人間が演奏する以上、正確に均等に演奏することは不可能です。特に連符に関しては均等に演奏することに意味がない場合もあります。
一方で、他の似たリズムで代用したり、つじつまを合わせるために極端にリズムが変わってしまうと連符の持つ独特な情緒が失われることもあります。
また連符はゆっくり練習しようと思っても難しい場合が多く、途方にくれてしまうこともあるでしょう。
まずは1拍を2等分・3等分・4等分・5等分・6等分・7等分・8等分する練習をしましょう。これがある程度正確にできるようになってきたら、連符の情緒を感じることができるようになるでしょう。
複雑な連符が楽譜に書いてあった場合、大抵は正確に演奏してほしいわけではなく、人間ならではの割り切れない即興的な情緒が欲しいことがほとんどです。
いろいろな連符を身に付けて、音楽の表現の幅を広げていきましょう。