ソルフェージュという言葉をご存知でしょうか。

 

音楽の基礎能力を鍛える訓練のことで、主に読譜(楽譜を読むこと)を中心に練習します。

子供のためのソルフェージュ教室もたくさんありますし、音楽大学でもソルフェージュの授業はほとんどの場合必須です。

ソルフェージュとは具体的にどのようなものか、どんなことに役に立つのか、勉強の仕方、などを見ていきましょう。

 

 

ソとファが語源

ソルフェージュは非常に古くからあります。

グイド・ダレッツォ(Guido d’Arezzo)は992年イタリア生まれの音楽理論家で、現在も広くから使われているド・レ・ミの原型を考案しました。

当時は

Ut Re Mi Fa Sol La

の六つで、ドはUt、Siは存在していませんでした。

詳しく語るとこの話だけで一つの記事になってしまいますが、このSolとMiを冠してソルミザシオン(Solmisation フランス語)という訓練ができました。

時代が進み、ド・レ・ミが定着すると、楽譜の読み方も変わってきて、SolとFaを冠したソルフェージュ(Solfège フランス語)という訓練ができあがりました。

 

 

楽譜を読む訓練(読譜)

ソルフェージュは上の語源の通り、楽譜を読む訓練が主となります。

簡単なものですとこんな感じです。

 

これを、「ミーレミファーレー」と読んでいきます。

歌うこともあれば、音名をリズムにあわせて読み上げるだけという場合もあります。

これが、難しくなると、このようになります。

 

毎回変化する拍子、細かく書かれたアーティキュレーション、複数の五線を飛び回る音符、複雑怪奇な連符・・・。

こんなのができて何になるの?と思われるかもしれませんが、近現代の音楽では、実際にこのような技術が必要になります。

 

また、楽譜を読んでその場で演奏する(初見演奏)訓練も、ソルフェージュではよく行われます。 

 

音を聞き取る訓練(聴音)

そして、ソルフェージュのもう一つの中心的な訓練が聴音です。

聴音はピアノや他の楽器で弾いた音を五線譜に書き取ります。

ただの旋律であることもあれば、和音であったり、オーケストラの一部だったりと、様々です。

 

聞き取れますか?(上級者向けです!)

 

リズムと音の高さをただ聞き取るだけでなく、シ♭とラ♯の違いなど、音楽理論も知っている必要があります。

総合的な音楽能力を問われる重要な訓練です。

 

 

音楽・楽譜に関する知識(楽典)

ソルフェージュを習う際には必ず一緒に勉強するのが楽典です。

 

cresc. とはどのような意味でしょうか。

略さずにイタリア語で書くことができますか?

のような楽語に関する問題や、次のような問題もよく出題されます。

 

 

・演奏する順番をアルファベットで並べなさい

 

楽譜には暗黙ルールがたくさんありますので、それらを知っていくことが必要になります。

 

 

何の役に立つの?

ソルフェージュの目的は一つではありませんが、初学者に関しては、なによりも楽譜に慣れ親しむことが目的です。

日本語の文章をすらすら読めるように、楽譜もすらすら読めるようになるのが目的です。

また、リズム感、音程感といった、基本的な音楽的な力を身につけることができます。

中級者になってくると楽譜はもう問題なく読めますので、楽譜の先にある表現をいかに読み取るか、ということが大切になります。

楽譜を通じて作曲家の意図に近づいたり、こまかな記号を逃さずに読み取り表現する力を身につけたりすることが目的です。

上級者になると、いかなる楽譜が出てこようと自力で読解し、演奏する力を身につけることが目標となります。

また、楽譜を読んですぐ音楽を理解し、演奏するといった力を身につけることになります。

 

 

内的聴覚

さらに、ソルフェージュの最終目的として、内的聴覚を鍛えるというものがあります。

内的聴覚とは、鳴っていない音を、心のなかで(脳で)想像し、鳴らすことができるということです。

内的聴覚が優れていると、演奏の際には理想的な音をイメージとして作りあげ、それを表現する、ということができるようになります。

また、楽譜を見れば、他の人の演奏を聞かなくても正確に音楽をイメージすることができるようになります。

独創的な音楽や、緻密な音楽というのは、内的聴覚なしには成り立たないのです。

 

 

ソルフェージュ批判

一方で、ソルフェージュはよく批判の対象にもなっています。

「あの人の音楽はソルフェージュ的だ」と言っていたら、それはたいてい批判の意味がこもっているでしょう。

正確さにこだわり、情感がこもっていない、という意味合いなのでしょう。

実際に、ドレミが読めるようになったり、リズムは手で叩けるようになったり、といったことは基礎能力であって、それだけで音楽を作り上げることはできません。

音楽はよく、基礎訓練と情感の対立で考えられてしまうからこそ、このような批判が成り立つのでしょう。

ただし、情感や解釈や主張といったことは、基礎的な能力があってはじめて音楽に活かせるものです。

またソルフェージュは音の高さとリズムを取れるようにすることだけが目的の訓練ではなく、内的聴覚を鍛えるという有意義な目標がありますので、ソルフェージュが全くの害のように扱われるのには疑問が残ります。

 

ソルフェージュを習いたい

ソルフェージュ教室は都内であれば多数ありますし、大手の音楽教室があれば、ソルフェージュ教室も併設されていることが多いでしょう。

子供向けの教室が多いのですが、音大受験生用のソルフェージュ教室や、大人向けのソルフェージュ教室があることもあります。

独学でソルフェージュを勉強するのは少し難しいのですが、教則本も多く出版されています。

できれば楽譜店で試し読みをして、ご自分に合いそうなものを選ぶと良いかと思います。

 

また、楽譜を読みながら曲を聞く、というのはソルフェージュ上達の早道です。

是非いろいろな曲を楽譜を見ながら聞いてみてください。

(演奏会場で楽譜を見ながら聞くのはマナー違反となります…ご注意ください。)

 

問題の答え

Igor Stravinsky 「詩篇交響曲」より第二楽章

 

A B A B C D C E F G F G A B C E

※ダ・カーポで戻ってきた後のリピート記号は繰り返されません