音楽のレッスンを受けていると、「この音は主音だから、落ち着いた感じで」とか、「ここはドミナントでフレーズが終わるね」などという言葉を聞くことがあるかもしれません。でも、主音とか、ドミナントって何のことなのでしょうか?分かりやすく解説します!


主音=トニック 下属音=サブドミナント 属音=ドミナント

いきなり答えを書いてしまえば、

主音=トニック(tonic)

下属音=サブドミナント(subdominant)

属音=ドミナント(dominant)

のことになります。日本語と英語の違いだけですね。・・・と言っても何のことかわからないかもしれませんので、まずハ長調の音階を提示してみましょう。



調の基準となる音が主音で、これを1つ目と数えた時、4つ目の音が下属音、5つ目の音が属音となります。簡単ですね!


これらの名称は、調の中でどのような機能を持っているか、を表しています。機能に関しては少し難しいのでここでは説明を省きますが、主音と属音が調の軸となり、この二つの音が長調だったり短調だったりの大黒柱になるわけです。下属音も、調を形作る上で大切な働きをしています。なお、英語バージョンも一応載せておきます。



導音

これで、調の主軸となる音に名前が付いたわけですが、機能が強くでる音がもう一つあります。それが、導音(Leading note)です。導音が鳴ると、次に主音を聞きたい!と強く感じられるわけですが、この「感じ」がまさに機能ということです。



残りの音の名称

これで、主音から数えて、1,4,5,7番めの音に名前が付きました。2,3,6番めにもそれぞれ名前があります。

2番めの音は、主音の上の音なので上主音(supertonic)

3番めの音は、主音と属音のちょうど真ん中なので中音(mediant)

6番めの音は、主音と中音の関係を下に持ってきたものなので(?)下中音(submediant)

とそれぞれ名前がついています。6番めの音に関しては少し不思議な命名ですね。属音の上の音ということで上属音(superdominant)と言わないこともないですが、これは非常に稀です。しかし、フランス語など、一部の言語では、上属音(sus-dominante)という言い方をすることもあります。



これらの名称は丸暗記するのは少しつらいので、主音、属音は覚えてしまって、主音に行きたくなる音が導音、あとは主音か属音からの位置関係、と覚えると良いでしょう。(下属音は属音の一つ下だから下属音なのです)


英語版も作っておきましょう。

日本語と全く同じ命名規則ですので、意味がわかると覚えやすいかと思います。


使いどころは?

トニック・サブドミナント・ドミナントという英語由来のこれらの言葉は、和音(の機能)の名称として使われることがあります。この場合、日本語ではそれぞれ主和音、下属和音、属和音と呼びますが、英語名称のほうがよく使われます。


この3つの和音を作る3つの軸となる音で、実はほとんどの和音はこの3つの和音の親戚として考えることができます。そして、それぞれT、SD、Dと呼び、次のような和音の進行を作ることが可能です。



T→SD→D→Tの進行はドミナント進行とも呼ばれ、最も指向性が強い進行です。これを演奏すると、一発で調が確定することから、クラシック音楽の中でも特に初期のバロック・古典時代は多用されていました。もちろん、Jazz、Pops、Rockなどあらゆる音楽で現在でも多用されています。



上記の矢印以外にも進行はあります。TとSD、TとDは往復が可能です。



Tを中心にSDに行ってみたりDに行ってみたり、というイメージですね。



なんだ、ここまで自由に行き来できるなら、なんでも行きたい放題じゃないか!と思ったかもしれませんが、D→SDだけは上記の二つの三角形の中にありません。これは弱進行と呼ばれていて、クラシック音楽では避けるべきとされています。


ただし、注意が必要です。「避けるべき」はすなわち「強い効果を生む」ということに他なりませんので、曲の決めどころで使われることがあります。




このD→SDはポップスなどでは多用されています。D→Tの安直な響きを避けるために、Tの代わりにSDを使うということが多いのです。


0:11 D

0:13 SD

わかると楽しい!

今鳴っている和音はTなのか、SDなのか、Dなのか、なかなかすぐに分かるようになるものでもありませんし、いちいちそんなことを気にしていたら、音楽をなかなか楽しめなくなってしまいます。しかしたとえば、不思議な和音の進行が出てきて、なんだかここは感動ポイントだな!と思ったときに、そこがまさにD→SDの弱進行だったりすることがあります。そういうことがわかると、さらに感動増えて、音楽理論もその曲ももっと好きになることができます。


ふとしたときに、これはTかな?Dかな?などと考えてみましょう。