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July 13, 2021

調ってなに? 〜音楽の”超” 基礎概念をわかりやすく〜

ハ長調とかト長調とかよく聞くけど、調って何?  それぞれどう違うの?  と思われたことはありますか?

ここでは、音楽の“超” 基礎の概念、調とは何か、をわかりやすく説明します。

 

<この記事を書いたひと>

日比 美和子(ひび みわこ)

東京藝術大学大学院在学中に、日本学術振興会の支援を得てニューヨークのコロンビア大学大学院にて音楽理論を学ぶ。2013年、東京藝術大学大学院音楽研究科博士後期課程修了。博士(音楽学)。2015 年渡米。NY、LA、SFを経て現在アーバイン在住。私立学校で講師を務める傍ら、曲目解説や CDライナーノーツの執筆、米国の主要都市でクラシック音楽のレクチャーを行う。共著『ハーモニー探究の歴史―思想としての和声理論』音楽之友社より出版(2019年)。


調とは?

調とは、ある曲や楽節が、特定の音から始まる長音階か短音階に基づいている状態を指します。

 

例えば、ハ長調は「ハ」音(ドあるいはC)から始まる長音階に基づいています。

 

特定の音から始まる、ということがとても重要なポイントです。

調には基準となる音「主音」があって、

その主音から始まる音階で構成されています。

どの音から音階が始まるかが調を決めているのです。

 

調には大きく分けて二つのグループ、長調と短調があります。

すべての長調は同じ構成になっています。

 

たとえば、ハ長調の音階「ド-レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド」の隣同士の音の距離(音程)を見ると、

「全音-全音-半音-全音-全音-全音-半音」という構成になっています。


「半音」とは、ピアノの鍵盤でいうと隣り合う2つの音の最短の距離(音程)です。

白鍵と黒鍵の両方を考慮に入れるので、「ド」の半音上は「ド#」もしくは「レ♭」です。

「全音」というのは半音2つ分の距離を指します。「ド」の全音上は「レ」です。


さて、ハ長調の音階をもう一度見てみると、

3番目と4番目の音の間が半音、それから7番目と主音の間が半音で、それ以外は全音です。

 

じつは、すべての長調はこの構造を持っているので、ハ長調でもト長調でも、どの長調であろうと、同じ場所(第3音と第4音の間と、第7音と主音との間)に半音があります。

 

では、短調は?というと、

すべての短調において、音階の2番目と3番目の間と、5番目と6番目の間に半音があります。

短調はそれぞれの短調に3種類の異なる音階があるのですが、ここではその一つ、自然短音階を扱います。


調の一覧は次の表でご確認ください。

どうやって調を特定するの?

実際の音楽の調はどのように特定するのでしょう?


比較的簡単な方法を4通りご紹介します。

通常、このうちのいくつかを組み合わせて調を特定します。

 

①   調号が何か

②   曲の雰囲気が明るいか暗いか

③   最後の音が何で終わるか

④   臨時記号のついた第7音があるかどうか


では順に見ていきましょう。

①   調号が何か

 

調号とは、楽譜のト音記号やヘ音記号の右隣に書いてあるシャープやフラットを指します。

シャープやフラットがいくつあるかを手がかりに、調を特定します。

この時点で2つの調にまで絞り込むことができます。


たとえば、調号がフラット3つの場合は、変ホ長調かハ短調の2つまで絞り込むことができます。

②   曲の雰囲気が明るいか暗いか


次に長調か短調かを特定するわけですが、これにはいくつかの方法があります。

一般的に長調の曲は明るく、短調の曲は暗く聴こえます。

それを手がかりにして長調か短調かを判定する手がかりにすることができます。


曲が明るいと感じるか暗いと感じるかには個人差があると思うので、論理的な方法も見てみましょう。


③   最後の音が何で終わるか

 

曲や楽句の最後の音は、多くの場合、主音(音階の最初の音)で終わりますから、この音を確認すると、何調かどうかを特定できます。


④   臨時記号のついた第7音があるかどうか

 

最後に、短調の場合は、和声短音階の法則を手がかりに調を特定できます。

先ほど、短調には3つの短音階があると言いました。


そのうちのひとつ、和声短音階には7番目の音が半音上げられるという法則があります。

たとえば、イ短調の場合は、7番目の「ソ」の音が半音上がって「ソ♯」になります。



したがって、繰り返し同じ音にシャープやナチュラルがついている場合は、それを半音上げられた第7音と疑ってみるとよいでしょう。

次の例では、イ短調の第7音に当たる「ソ」にシャープが繰り返し現れるので、イ短調の和声短音階だとわかります。

調の歴史

 

最後に、調の歴史について少し解説します。

今日では、あらゆる調が作曲に使われますが、実は18世紀までは限られた調しか用いられませんでした。


また、人気のある調というのもあって、たとえば、管楽器の活躍する曲には、変ホ長調や変ロ長調がよく用いられます。これは楽器の性質と関わっています。

 

トランペットやホルンなどの管楽器はそれぞれ固有の調を持っています。

B♭管やE♭管と呼ばれるのを聞いたことがあるかもしれません。


こうした管楽器は移調楽器と呼ばれますが、B♭やE ♭から始まる音階の調を演奏するのは得意でしたが、他の調の音楽を演奏するのは苦手だったのです。

 

例えば、モーツァルトのホルン協奏曲の多くは変ホ長調ですが、変ホ長調はナチュラルホルン(バルブがない昔のホルン)で演奏しやすい調なのです。

モーツァルト:ホルン協奏曲第3番

特定の調が曲の性格と結び付けられることは一般的でした。

たとえば、変ホ長調は英雄的な響きの調としてよく使われています。

ベートーヴェンの交響曲 第3番「英雄」は変ホ長調です。


もっとも、管楽器はファンファーレなど華々しい場面にふさわしい楽器ですから、管楽器が得意とする調が英雄的な雰囲気の曲と結びつけられるのも納得でしょう。

ピアノの場合はというと、19世紀以降になると、ショパン、リスト、ラフマニノフなどの作曲家たちが、様々な調や新しい音の響きを開拓するために、たくさんの調号を用いた作曲を行うようになりました。


昔はピアノの調律が今日と異なり、特定の調の音楽を演奏した時に美しく聴こえるように調律されていたので、同じ演奏会の中で複数の異なる調の曲を演奏するのは容易ではなかったと言われています。


しかし、次第に調律の方法も変わり、20世紀になるとピアノの調律も十二平均律が一般的になって、どんな調の音楽を演奏してもある程度自然に聴こえるようになりました。

 

20 世紀には、さらに調のない音楽が登場しました。

これは無調音楽と呼ばれる音楽で、調の中心がどこかわからない(主音がどこかわからない)、あるいは「ド」から1オクターブ上の「ド」までの12の音が平等に扱われる音楽などを指します。


無調音楽に出会う機会は少ないですが、調のない音楽を聴いてみると、いかに調という概念が私たちの音楽に深く浸透しているかを改めて感じることになるでしょう。



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