こんにちは、サクソフォーン奏者の柳下柚子です。

今回はよくご質問をいただく“アーティキュレーション”についてお話します。

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執筆者紹介

 

東京藝術大学大学院博士課程に進学。フランスでサクソフォーンの初等教育を研究し、ビギナーの育成法や教材制作のマネージメントを行うほか、音楽大学生などのサクソフォーン指導者を対象とした教育法セミナーを主催。第1回K国際サクソフォンコンクール第3位。

柳下柚子の映像レッスンとオリジナル執筆教材は、フォニム エアロフォンカリキュラムの2ヶ月目から10ヶ月目で好評配信中。

また、エアロフォン講座で提出されたホームワーク演奏へのアドバイザーも務めています。

※アドバイスは複数人のチューター陣が担当しています。

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アーティキュレーションとは?

アーティキュレーション・・・音と音とのつなぎ方や切り方

楽譜では以下のような記号を用いてメロディーをどのように演奏するか表します。


①スラー

音と音を切れ目なくなめらかに演奏する。管楽器の場合はタンギングをしないで演奏する。


②スタッカート

音を短く切って軽やかに演奏する。実際の音の長さはやや短くなる。

③アクセント

音をより強調して演奏する。


④山型アクセント

音楽のジャンルや時代によって解釈が異なり、クラシックではアクセントよりさらにその音を強調することが多い。ジャズでは音の長さを2/3程度にして、リリース(音の終わり方)をしっかり止める。


管楽器の場合、これらの表現は全てタンギング(舌で音を区切る奏法)のテクニックに関係します。メロディーに表情を付けるためには、このような記号に沿ってタンギングの種類を変えることがとても重要です。

これは言語でいえば発音にあたる部分で、いくら使う単語は合っていても発音が悪ければ何が言いたいのか分かりません。アーティキュレーションがきちんとついていないと、それが何を吹いているのか、クラシックなのかジャズなのかポップスなのか…?聴いている人に伝わらないのです。楽器を始めたばかりの頃は多くの方が運指を覚えることばかりに気を取られがちですが、タンギングのテクニックというのは実は音楽を演奏する上で非常に大切なポイントだと言えます。

アーティキュレーションについて

「楽譜にスラーやスタッカートが何もついていないんだけど、全部タンギングすれば良いの?」


という質問をよくいただきます。特にジャズやポップスの楽譜ではアーティキュレーションが一切示されていないことが多いです。管楽器の場合は、スラーなどが何もついていない音はタンギングをして演奏すると学習しますので、こういう楽譜に出会うと少し面食らう方が多いのかもしれません。皆さんはアーティキュレーションが何もついていない楽譜はどのように演奏しますか?

アーティキュレーションが何もついていない楽譜を全てタンギングするのはNG

どんな風に演奏するのか自分で考える必要がある!

ジャズやポップスの楽譜にスラーなどが一切ついていないのは、演奏者が自由にアーティキュレーションをつけるためです。

特にジャズでは楽譜を元にメロディーをアレンジしたり、アドリブ(即興演奏)を行ったりするので、そもそも楽譜にスラーやスタッカートなどを細かく指定しておく必要がないのです。これらのジャンルにとって楽譜というのはメロディーの音の並びとコード(ハーモニー)を伝えるためのものなので、その先にある“メロディーをどう吹くか”というのは、自分で考えて表現を工夫する必要があるのです。そのためにはそれぞれのジャンルの音楽をよく学び、表現に必要なセンスを身に付けなければないけません。

フォニムの講座で使用している楽譜を見てみましょう。

楽器を始めたばかりのころは、できればあらかじめアーティキュレーションがついている楽譜を使用することをおすすめします。楽譜についているスラーやスタッカート、アクセントなどは、その通りに演奏すれば、メロディーの持つ雰囲気や表情をうまく引き出せるようになっています。言い換えれば、自分でどう演奏するか考えるステップが省かれているので、初心者の方にとってはとても親切な楽譜であると言えるでしょう。

さらに、このような楽譜で練習を重ねていくことで、自然と音楽の語法やセオリーを身についけていくこともできます。

いかがでしたか?

普段何気なく見ている楽譜も、音楽のジャンルや演奏の難易度によって書き方に様々な違いがあります。

ぜひお手元の楽譜がどのように書かれているかチェックしてみてください。